世界初!
西陣織から生まれた
伝統と進化の融合
太陽工業株式会社
中谷 可奈子
――膜構造建築物の設計をされているそうですが、今回のパビリオンにはどのように関わられていますか?
今回は、①西陣織膜材の開発・製造・加工、②鉄骨の生産設計・製作、③西陣織膜材やその他膜材の設計・施工を担当しました。私はその中でも、西陣織膜材の製造データの検討や、鉄骨2次部材と構造用膜材、西陣織膜材との納まり検討に関わり、絵柄を織り込んだ膜材をどのように設計し、柄合わせを行うかを考えました。通常、膜材料開発には10年以上かかると言われています。今回太陽工業は絵柄・凹凸のある生地や柄合わせに初挑戦、細尾様は西陣織の屋外使用やミリ単位での調整が初挑戦という状況のなか、約2年という短期間で形にできたことは本当にすばらしいことです。各社で協力し、知恵を出し合い、たくさんの課題を乗り越えようやく形にできました。
――パビリオンの構想・開発にあたっての意気込みを教えてください。
計画当初に高松先生(設計)のイメージパースを見て、衝撃を受けました。これは難しい挑戦であり、膜構造業界の歴史に必ず残ると感じました。凹凸のある生地を外装材とすること、絵柄やパーツ形状を生地の製造段階で織り込むこと、絵柄を合わせること。すべてが初めての挑戦で、本当に実現できるのだろうかと思うほど多くの課題がありますが、あのイメージパースを何とか形にしたいという強い思い取り組んでいます。
――どのような点に苦労されましたか?
苦労した点は、西陣織の柄合わせです。膜材料と製造方法(凹凸のある織り方、タテ糸とヨコ糸の太さや伸度の違い、テンション管理方法など)がまったく異なる生地を使った柄合わせは非常に難しく、その特性を把握することに多くの時間を要しました。特に大きな壁となったのが生地の伸縮です。試作を進めていくと、製造工程(織り、コーティング)で生地が縮むことがわかり、そのまま織ると絵柄が大きくずれてしまうことがわかりました。そこで「生地を拡大して織る」という、今まで膜構造業界にはなかった新しいアプローチを取り入れました。さらに、織機のクセや糸の方向によっても伸縮の傾向が異なるため、織機ごと、糸方向ごとに拡大率を設定し、絵柄のずれを最小限に抑えるように努めました。
――来館者にどのようなことを感じてほしいですか?
日本の伝統工芸である西陣織を全面に施した建物は、世界初の試みです。通常の膜構造建築では、白くて明るい柔らかな印象が障子を連想させることが多いですが、西陣織の織りの技術と膜構造の加工・設計・施工技術を融合させたことで、深みのある真紅の質感が生み出す荘厳な雰囲気と、大胆にデザインされた花柄による圧倒的な迫力で、屏風のような印象を表現することができました。「飯⽥グループ×⼤阪公⽴⼤学共同出展館」は、たくさんの挑戦が詰まったパビリオンです。膜構造が世に広まった70年万博から約50年。再び大阪の地に戻ってきた今回は、さらに建築・膜構造の技術が発展したことを感じていただけると思います。